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小説『美しき凶器』女型巨人の原点、ここにあり!

  • 執筆者の写真: Dancing Shigeko
    Dancing Shigeko
  • 2023年7月24日
  • 読了時間: 4分

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 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 今回は東野圭吾作品 小説『美しき凶器』を紹介します!


[基本情報]

 著者:東野圭吾

 出版社:光文社文庫

 出版年:1997年

 ページ数:385ページ


[登場人物]

日浦有介

 元陸上競技ハードル選手。今はフリーライターをしている。妻小夜子が妊娠している。

 臆病者のようなしっかり者ののような掴みどころのない存在。

佐倉翔子

 元体操選手。今はキャスターとして活躍している。

 約160センチの化粧によっては西欧人形のような気配を見せると言うことは…?石原さとみかな?

 タランチュラと呼ばれる女性。カナダ人で身長190センチ以上ある褐色の肌の筋肉が美しい女性。

 進撃の巨人の女型巨人を想像してしまう。

紫藤

 山梨県警刑事。自分の身代わりに吉村巡査が犠牲になったと責任を感じている。

 一瞬、キムタクのような気配を感じる場面があった。


[内容]

 安生拓馬、丹羽潤也、日浦有介、佐倉翔子の4人は仙堂の屋敷に潜入して書類を探していた。その最中に彼に見つかり、勢いで仙堂を殺してしまう。4人は証拠を隠すために屋敷を焼き払って去っていく。

 その様子をモニタ越しに見ていた娘は仙堂の仇を取るために山梨の倉庫から4人が住む東京に出ていくのだった。


[感想]

 巨大な筋肉娘が4人の元アスリートを狙う作品。

・どこかで感じたことのある存在

 作品はタランチュラと呼ばれる娘の視点で語られる場面と、捜索する警察と、過去の共通の秘密を持つ4人の視点が交互に描写されていく。

 娘の描写の中では、彼女は言葉を発することはなく、何を言っているのかは理解しながらも、自分の意思は指差しで示す。

 そしていざターゲットを見つけた時の動きの速さと言ったら超人。何となくその気配が女型巨人を思わせる。

 目の前の障害物をモノともせずどんどん突き進んでいく。槍を精度よく投げる力など、野生的な感じが非常に似ている。

 時系列で言ったらこの娘が女型巨人の元ネタなのではと思うほど。実際のところはどうなのか?

 

・凶器と狂気

 小説のタイトル『美しき凶器』。このタイトルを見て、読み進めていくと必然的にタランチュラと呼ばれている娘のことを指しているのだろう、と思う。実際にストーリー中でも、肉体美の美しさに加えて、顔も美形だと描写されている。だからストレートに考えるなら、彼女のことを描きたい作品だったのだろう、と思う。

 しかしなんとなく自分は違う意味が含まれているように感じた。東野圭吾作品特有の後半でひっくり返しにくる展開が待っている。この作品も然り。

 その中心となるとある人物。その発想は、狂気と言わずにはいられない常軌を逸している。そして着飾って時間をかけて作り上げた顔を見たものたちは、皆、息を飲む美しさと感じる。

 この狂気と凶器と両方の意味を持たせていたのではないか。そして真に描きたかった人物はタランチュラではなかったのではないか、と感じた。

 それだけに、一番最後の描写で、また?となってしまった。やっぱり娘の方を中心に描きたかったのだろうか。

・過去を隠蔽しようとしたために

 この物語の裏には、ドーピングしてでもアスリートのトップに立ちたいという欲求が描かれている。登場する四人の元アスリートは、皆それぞれの競技で過去トップに君臨した経験を持つ人たち。もちろん、そのためにドーピングをしているのだけれど。

 その輝かしいアスリート人生があったから、その後の生活も、それなりに安定した生活を送っている。地位と名声と安定を手に入れた四人が考えたのは、その維持。

 そのためには過去が暴かれることがあってはならない、という発想から、最初の盗みに入る場面がやってくる。

 築き上げてきたものが、あまりにも大きいから安定のためにその道を選んでしまったのか。そもそもトップに君臨するためにドーピングに頼ろうと思った心境。これは長くその競技でもがきつづけ、それなりのところまで到達したアスリートなら負けてしまう誘惑なのだろうか。

 恐ろしいなぁ、と思ったのは、自分より強い選手たちも「みんなどうせやっているだろう」という発想。だから自分のやろうとしていること、やっていることは悪くない、という自己肯定の仕方。

 もしギリギリのラインに立っていたら、その一言を聞いた時にぐらっと来てしまうものなのかもしれない。今までに明るみに出ないのは、みんなやっていて口裏合わせているからだよ、的なことを言われたら、コロコロっと転げ落ちそうな、そんな恐怖を感じる。

 トップアスリートというのは、結構、精神的に際どいところで戦っているのかもしれない、と考えさせられる作品だった。


 アスリートの闇を感じる作品だった。

 読了日:2023年7月22日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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