こんにちは、Dancing Shigekoです!
今回は伊坂幸太郎作品 小説『マリアビートル』を紹介します!
[基本情報]
著者:伊坂幸太郎
出版社:角川文庫
出版年:平成25年
ページ数:591ページ
[登場人物]
七尾
闇社会の何でも屋。とても運が悪い。
映画でブラット・ピットが演じていた役。原作を読んでみると、印象は近いものがあったと感じる。
真莉亜
仲介屋。七尾の仕事を斡旋している。
具体的な表現が難しいが伊坂幸太郎作品に登場する女性といった印象を受ける。
蜜柑
闇社会業界トップクラスの職人。切れ物。檸檬と共に行動をする。
しっかりしている印象、それでいて頭脳明晰感があるのがいい。
檸檬
蜜柑の相棒。機関車トーマスを崇拝していて、何事もトーマスのキャラを引用する。
映画版とはやや違った印象を受ける原作。
王子
中学生。全てを支配しようと思っている。
だいぶ腹立たしい存在感。
木村
闇社会の何でも屋。アル中を治そうと努力している。息子の渉を王子に突き落とされて復讐を誓う。
酔っ払っている感じが、映画のイメージともよく合う。
[内容]
七尾は真莉亜が受けてきた仕事の内容を確認していた。東京駅から新幹線に乗り、スーツケースを奪って上野駅で降りる。ごくごく簡単な仕事と言う。運が悪いことで定評のある七尾は、簡単に終わるはずがないと思っていた。
そして乗り込んだ新幹線には、蜜柑、檸檬、木村、王子とそれぞれの思惑を持ったものたちが乗り合わせているのだった。
[感想]
新幹線で展開される伊坂ワールド作品。
<映画と比較しながら原作を楽しむ>
・結末が違いすぎる
映画『ブレット・トレイン』を先に鑑賞していたので、大筋を知っているこの作品。映画の登場人物と映像を重ねながら読み進めていくことができるのは、面白い。登場人物の設定が違う部分については、別の人物を想像してみる。
檸檬と真莉亜は原作と劇場版とでだいぶイメージが違う。王子はそもそも映画では女性だったから、全然違う。参考までに王子のイメージは漫画『ヒカルの碁』に出てくる塔矢アキラ。おかっぱできっちりとした服装、しっかり者の感じを出していると言うイメージがぴったり。
話の流れも映画が比較的原作に忠実。向かう先が原作は盛岡に対して、映画は京都というのはだいぶ変えている。盛岡に向かう辺りは仙台市に住んでいた伊坂幸太郎らしいと思ってしまう。映画で京都に向かう辺りはハリウッドから見た日本のイメージということだろうか。
七尾がトランクを狙い、蜜柑と檸檬が裏社会の首領的な存在の峰岸の息子を連れている辺りも同じ。七尾が巻き込まれるトラブルも映画と原作同じような路線。
しかし絶対的に違うのが結末。映画はいかにもハリウッドという感じなのに対して、原作はそのド派手さはなく、後半はだいぶ印象が違う。どちらがより世界観を楽しめるかと言ったら、原作のように思う。
個人的には結末をもう少しスッキリさせる描写があっても良かったように思う。ハッキリと描写しなかったのは、あまりにも残酷に思われてしまうからなのか。含みを持たせる事で、続編ができるのか。そう言う意味では含みがあっていいのかもしれない。
映画との違いを楽しみつつ、原作の良さを十分に楽しめる展開だった。
<No.1・・・は>
・イライラキャラは…
読み進めていて、とにかく子憎たらしく感じ存在は王子。中学生で自分の手は汚さずに言葉巧みに周りの人を操って、自分の思い通りにする。その様子を見て人を小馬鹿にしている。そんなタイプのキャラ。
王子の章になると心の動きが描かれていて、その度に人を馬鹿にしているのが分かる。とにかく読み進めるにつれ、なんとかならないのかな?この存在と憎たらしくて仕方ない感じだった。
それだけに塾講師に言いくるめられて、さらには自分の思い通りに行かなくなる展開が後半に待ち構えていて、安心した。
・なんとかなって欲しかったキャラは…
その王子とは逆にこの人は最後まで生き残ってほしいと思う存在は蜜柑。いつも檸檬のトーマス話に付き合わされて、それを毎度のことと呆れながらも付き合う。
何事も慎重に考えて行動するあたりに闇社会に生きるプロという感じがよく出ている。
この作品、次々と人が死んでいくので、蜜柑も大丈夫だろうかと思う展開になっていく。
結末はなんとも残念な感じ。と思っていたのだけれど、最後の最後でそうでもないかもと思えるオチが待っていたのでよかった。
・伊坂作品キャラは…
伊坂作品と言うと、異次元の回答をするとか、あまり相手の言葉を聞いていない感じの人が代表的なイメージ。そして今回は、真莉亜がそのような印象を与えた。もちろん七尾の言っていることをきちんと聞いているし、その受け答えも極めて標準的なものなのだけれど、どこか梯子を外しにきているような印象を受ける。
他にも檸檬も典型的な伊坂作品キャラという感じであったけれど、真莉亜の方が個人的には、何か個性的に感じられた。
<盛岡に向かう>
・東京駅を出発
東京駅という名称は出てくるものの描写は特に多くはない。七尾が東京から新幹線に乗ったのだな、とのみ。それでも東京駅と言えば、どんな見た目をしているか、想像もできるし、新幹線乗り場と言えば、あの人混みの中を通り抜けていった先のあの辺りだなぁと思う。自分自身は東海道新幹線がメインになってしまったけれど、学生の頃は東北新幹線を利用することもあっただけに愛着が湧く。
・新幹線の中
そして新幹線に乗り込んでいく。はやてとこまちの連結新幹線。盛岡で切り離して秋田に向かうこまち。はやては盛岡止まり。その連結部分では行き来ができない。はやての先頭車両まで行くと言った場面がよくあったのと、トイレに人を閉じ込める描写、スーツケースを置いておくデッキの部分の様子など、新幹線らしさが伝わってくる。なかなか興味深い。
のんびり新幹線の旅というのも久しくしていないなぁ。
・仙台駅を通過
七尾は仙台駅で降りることなく、そのまま盛岡まで向かう。仙台駅はよく通っていただけに、想像しただけで懐かしい。もう20年以上も前のことだから、だいぶ変わってはいるのだろうけれど、自分にとって馴染みのある土地が出てくるというのはいつだって楽しいものだと感じる。
今の仙台駅はどんな感じなのだろうかな。
七尾と真莉亜が中心ではあるものの、蜜柑、檸檬、王子、木村と個性派が新幹線でどう関わっていくのかを予測しながら読み進めるのが楽しい作品だった。
読了日:2023年1月30日
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それでは、また次回!