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小説『終末のフール』仙台で迎える終わりの時


 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 今日は人生で2が一番多い日。写真撮りたかった…


 今回は伊坂幸太郎作品 小説『終末のフール』を紹介します!


[基本情報]

 著者:伊坂幸太郎

 出版社:集英社文庫

 出版年:2006年

 ページ数:382ページ

[登場人物]

 八つの物語でそれぞれ二、三人の登場人物

[内容]

 地球に八年後に小惑星が衝突する。報道当時は自暴自棄になった人々がありとあらゆる行動をとっていた。強盗、殺人、自殺。

 その事実が知らされてから五年。仙台の街は落ち着きを取り戻していた。

 これは、仙台で生き残った人たちの八つの物語。


[感想]

 人生が後三年で終わる。その時、どう過ごすかを描いた一冊。

・それぞれの人生が興味深い

 娘と絶縁状態だった老父婦。何年ぶりかに再会する。絶縁になった過去を振り返り、そして未来に向かって助言を言い残すという展開。

 優柔不断な男。妻が妊娠したと告白する。残り3年で赤ちゃんを産むかどうかの決断に迫られる。悩み悩んで決断を出した男に意外な結末が待っている。

 ニュースキャスターの薄情な発言に恨みを覚え、小惑星の衝突で死なれるよりも先に殺してやると籠城する兄弟。しかし、そのニュースキャスター一家の思いを聞いて、違うことを決心する。

 父の残した本を全部読み終わり、次は何をするか。と考え、恋人を作ることを目指すようになる。そして高校の同窓生を訪ねていくが、騒ぎで亡くなっていた。次に訪れたのは家庭教師。彼から、助言をもらう。

 強くなりたいと思って始めたキックボクシング。そのジムにいた憧れの人物 苗場。小惑星の騒動後も二人は今も練習を続けている。

 最愛の妻を亡くし、自殺しようと考えていた男に、大学の友人から連絡がある。会いに行って、昔話に浸る。

 役者を目指していた女性が、姉の役、娘の役、母の役、恋人の役になりすまして、生き残った近所の人たちと付き合っている。そして偶然にも全員が一つの場所に集まる。

 レンタルビデオで働く男性。父親がビルの屋上に櫓を作っている。そこに娘と一緒に登ってみて、小惑星が当たる時のことを想像する。

 と言った8つの物語。どれも生きることとはなんだろう、と考えさせられる展開だった。


・復讐のつもりで入った虎一と辰二

 立て篭り事件の被害者であるはずの妹が報道番組に面白おかしく取り上げられて自殺した。その恨みを晴らすために、兄 虎一と辰二が、その報道を担当していたキャスターの家に押し入る。そして小惑星で一緒に死ぬなんて許せないと言って、キャスターを殺そうとする。ところが、彼らが考えていたことが、毒を飲んで自殺することだと知ると、虎一の態度は一転。そんな簡単な方法で死なれては困る。とことん生きて、ずっと反省し続けろ、と罰にも近い命令をして、去っていく。

 そんなやりとりをしていて、メディアの対応には再び疑問を感じる。他の本でもメディアというのは被害者の心を気にしないものなのだと思う場面が多く、この虎一、辰二の思いが伝わって来るようだった。

・学生の頃、過ごした仙台が舞台

 青葉山の大学キャンパスやその向こうの方へ行く場面。きっとこの辺りだろうと思われる。

 レンタルビデオ屋はどこのことなのだろうと想像する。

 誰かがテンポよく出す地名に広瀬川が出てきて、あの川だと思い出す。どのあたりだろうかと。

 そして一番登場回数が多かった北部のヒルズタウン。泉区のことだと思いながら読み進めていた。

 何かと懐かしさのある作品。

・一番印象に残ったのは…

 「鋼鉄のウール」というエピソードでキックボクシングの実力者 苗場という男が登場する。ある時、彼に襲いかかってくるものがいた。そんな彼らに「死ぬと分かったら生き方が変わるのか?」と問う。この言葉がとても印象的。死ぬと分かっても生き方が変わらないと言う発想がなかったので目から鱗だった。

 今を大切にするというのは、つまりこの言葉で表される通りなのだと痛感。いい言葉だった。


・自分ならその時…

 この世界では小惑星が衝突するから、自暴自棄になって、やりたい放題になっていった人たちが沢山いる。そして殺しをしたり、盗みをしたり、自殺したりする。自分がこの状況に追い込まれたら、「小惑星が当たるとは限らない、世の中に絶対はない」と信じて、その日まで生き続けるだろうと思う。

 そんなにパニックになるものなのか。どうしたらいいかわからないと感じる瞬間があるのかもしれない。果たして、どうなるだろうか。


 人生の終わりを知らされた時、どうするかを考えさせられる一冊だった。

 読了日:2022年2月21日

 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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