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小説『椿山課長の七日間』逆走装置でセカンドチャンス


 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 今回は小説『椿山課長の七日間』を紹介します!


[基本情報]

 著者:浅田次郎

 出版社:集英社

 出版年:2015年

 ページ数:450ページ


[登場人物]

椿山和昭

 デパートの課長。過労で急逝。

武田親分

 ヤクザの親分。他のターゲットと間違われて殺される。

根本少年

 小学生。車に撥ねられ亡くなる。

[内容]

 椿山課長はバーゲンの在庫を勝ち取るために業者と接待していた。ところが、突如意識が遠のき、気づくと沙羅の花が咲く道にいた。そこは天国への通り道。

 役所の人の指示に従い、講習を受けるが、邪婬の罪を問われ、異議を唱える。現世に思い残すことがあると言って、交渉の末、逆走されることになった。

 時同じくして黄泉の国に来ていた武田、根本少年ともども現世に戻って、やり残したことを遂げる行動に出るのだった…


[感想]

 死後七日間の世界を三人の登場人物を中心に描く作品。

・椿山課長の七日間

 邪婬の罪に納得せず、家族のことも気になって現世に戻っていく椿山。現世では、生きていた頃と真逆のイメージの人物になると言われる仕組みで、女性として現世に戻る。

 家族の元へ行くと、そこでは妻の秘密を知ってしまい、偶然乗った電車では父の秘密を知る。意図的に会いに行った女性の友人の思いを知り、ことごとく椿山の想像とは異なる現実が待ち受けている。

 死んでまで、みんなの秘密を知ってしまうのはどうなのだろう?それであれば、静かにこの世を去った方がよかったのだろうか。


・武田親分の七日間

 ヤクザの親分武田は、弁護士になってこの世に戻る。気がかりだった子分たちの行った先の3人の親分に会い、誰と間違われたのか。殺し屋を雇っていないか、探りを入れていく。すると、それぞれの思惑が描かれる。武田に語らわれることはない、それぞれの思惑。その結果、誤って殺されてしまった武田。その構図の悲しきこと。皆、武田のことは慕っていたのに、その慕われていた人物が誤って殺されるのだから、これが世の中ってものなのかもと感じさせる。


・根本少年の七日間

 そして根本少年。女の子になってこの世に戻る。本当の両親を知りたくて、戻ってきたという根本少年。彼の両親探しに協力するのが、椿山の息子と父というのだから、なんという巡り合わせ。現世に戻るだけではなく、この辺りの見せ方に工夫があるのが面白い。

 根本少年と椿山課長が、現世での経験をもとに、あの世で親密な関係になるのかもしれない?そんな予感をさせる設定。


・黄泉の国のイメージ

 黄泉の国というと、丹波哲郎氏の映画『大霊界』が思い出される。死んでしまったのだ、と思わせる見せ方の世界観と違って、この世界は死んでもなお普通の生活が待っている、そんな印象を受ける。受付にできる長蛇の列。講習を受けて、次のステップに回される様子。まるで免許センター、そんな場所で一通りの事務処理を済ませると、晴れて極楽へと向かうというのだから、面白い。

 またこの世に逆走されて来れるのは死後7日間のみ、という内容や、時間の厳守、身バレ禁止、復讐の禁止というルールがあって、それを破ると怖いことになるというあたり、本来なら深刻なのだろうけれど、なぜか愉快な気持ちになる安心感があるのが印象的。


・終わりは始まり

 そして極楽へと向かっていくと、そこには迎えがいる。自分をよく知る誰かが迎えにきてくれるという。この世での生活は終わってしまったけれど、極楽での安らかな生活が始まる、そんな感じの終わり方。死後の世界に安心感をもたらしてくれる展開だった。

 この世に思い残すことがあっても7日間のチャンスがもらえると思わせてくれる一冊だった。

 読了日:2022年6月23日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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