小説『クスノキの女神』クスノキの新たな活用法?!(※ネタバレあり)
- Dancing Shigeko
- 2024年9月22日
- 読了時間: 4分
更新日:5月7日

こんにちは、Dancing Shigekoです!
先日読み終わった小説『クスノキの番人』の続編。
今回は小説『クスノキの女神』を紹介します!
[基本情報]
著者:東野圭吾
出版社:実業之日本社
出版年:2024年
ページ数:312ページ
[登場人物]
玲斗
月郷神社クスノキの番人。
栁澤千舟
玲斗の叔母。軽度認知障害と診断されている。
早川佑紀奈
女子高生。作成した詩集を神社に置いてほしいとやってくる。
針生元哉
中学生。脳に障害があり、寝ると記憶が消えてしまう。
[内容]
月郷神社に女子高生の早川佑紀奈がやってくる。彼女の詩集を置いて欲しいと頼まれ、玲斗は置いておくための台などを準備してあげていた。その詩集を盗もうとしていた男がいる。その男は後日、強盗傷害事件で逮捕される。
男が身を隠すために月郷神社のクスノキにいたと知って、玲斗はある事を考えつく。それがきっかけで事件解決が加速する。
玲斗は千舟の軽度認知障害の助けとなると考えて、認知症カフェへいく。そこで知り合った針生元哉。後日、偶然、千舟の診察の時に病院で会って話をしたのがきっかけで親しくなるのだった。
[感想] (※ネタバレあり)
クスノキの番人・玲斗が事件や人助けをする作品。
・事件解決の糸口に?
住宅街で強盗傷害事件が起きる。その犯人として捕まった男性 久米田。どうも言っている事に矛盾がある。久米田の母は千舟の近所に住んでいる知人。千舟のところに久米田の母が相談に来る。玲斗は強盗傷害事件を捜査している中西刑事から聞いていた話から、あることを思い浮かぶ。
それは事件が起きた夜、久米田はおそらくクスノキの中にいたと言う。だから久米田の母が授念したら、久米田が事件当日何を考えていたかが分かるのではないか、という。
そして授念した結果、驚くべき事実が明らかになるという流れ。
クスノキの使われ方が、前作とはだいぶ変わっている。感動を与える授念から、真相を明らかにする授念。新しい使われ方。
クスノキの番人の続編というから、同じような流れだと思っていただけに、予想外の展開。こうきたか、と思う流れだった。
・思い出の味の再現に?
強盗傷害事件はいったんは落ち着き、次なるエピソードが何か、と思ったら寝ると記憶がリセットされる少年が登場。どこかで聞いたことのある症状。掟上今日子もこんな感じなのか、と思いながら読み進めていく。
一体、この少年とクスノキがどう関係してくるのか?
と思っていたら、またしても玲斗がとびっきりの提案をする。
元哉の母・冴子が誕生日プレゼントをしたい、どんなものがいいかと相談に来る。元哉は玲斗のことを気に入っているから、何か思い浮かぶかもしれないと思って相談に来たと言う。玲斗は最初は何も思い浮かばなかったけれど、ふと元哉との会話の中で、昔住んでいた場所の近くにあったお店で食べた大福の話を思い出して提案する。
その梅大福の味を再現するために、クスノキを活用すると言うもの。
記憶の中の味をクスノキで伝える。これまたかなり新しい。玲斗の発想力がすごい。そして相手を喜ばせたいと心から願って考え出す心意気がいい。
・人生の最高を再度体験するために?
そして最後の活用方法は、元哉からの相談。自分にとって最高の出来事があったときに記憶を残したいと言う。その最高の記憶を特別な時に授念できるようにしておきたいという。1日で記憶がリセットされてしまう元哉。
毎日、日記をつけているけれど、その感動が味わえないのが残念、という元哉。最高の思い出を授念するところまでが描写される。そこからの展開があまりにも切ない。なんとなく、その結末が待っていると言うのは予想がつくものの、いざ読み進めて、その展開になるとやり場のない切なさを感じた。
この結末、皆だったらどう捉えるか。
・終わってみれば・・・
大事な思いを故人から受け取る。それがクスノキの使い方だった。少なくとも前回の小説『クスノキの番人』ではそうだった。今回はこういった使われ方の様子は薄く、どちらかというとこれまでにない活用のされ方をしている。
さらに登場人物が記憶障害の少年 元哉。そして少しずつ覚えていないことが増えていく軽度認知障害の千舟。そして元哉と女子高生の佑紀奈が作ろうとしている絵本の内容。未来を見たい少年がクスノキの女神に会いに行くという絵本。
などを通じて、伝えたかったことは、今を大切にしなさい、生きているということが大切なのだということなのではないか、と感じた。
クスノキの新たな使われ方が描写され、新たな可能性を感じさせつつも、結末はこれで終わりという感じが残る作品だった。
読了日:2024年9月13日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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