こんにちは、Dancing Shigekoです!
予約していた本が半年ほどして確保された!
今回は東野圭吾作品 小説『クスノキの番人』を紹介します!
[基本情報]
著者:東野圭吾
出版社:実業之日本社
出版年:2023年
ページ数:483ページ
[登場人物]
直井玲斗
本作品の主人公。クスノキの番人を任される。
柳澤千舟
ヤナック・コーポレーションの顧問で、玲斗の伯母。
佐治寿朗
クスノキに祈念に来る男性。
佐治優美
寿朗の娘。夜中に祈念に来る父親を訝しんで跡をつける。
大場壮貴
たくみや本舗の元社長の息子。無理やりクスノキの祈念に連れてこられる。
福田守男
たくみや本舗常務取締役
[内容]
窃盗罪で警察に捕まった直井玲斗。彼を助け出したのは、伯母の柳澤千舟だった。弁護士費用などを持つ代わりにクスノキの番人をするように命じられる。
クスノキの番人見習いになって、夜の祈念に来る人たちの対応をする。その中の一人、佐治寿朗が祈念に来た時に、クスノキの方へと忍び込もうとしている女性を見つける。彼女は佐治の娘・優美。父親が夜中に何をしているのかを探っているという。見にいくのは禁止されていると突っぱねようとするが、彼女の必死の様子と、祈念について知りたいという好奇心から佐治の記念の様子を見にいく。そこでは奇妙な鼻歌が漏れ聞こえていた。
別の日にやってきた大場壮貴。渋々祈念に向かうが自分には無理だったと言って帰っていく。付き添いの福田はまずは祈念に来てくれたことでも前進と考えていた。
そう言った出来事を通じて玲斗は祈念が何かについて知ろうとするのだった。
[感想]
クスノキの番人になった玲斗と祈念にまつわるエピソードが描かれる作品。
・祈念の謎
この物語の一つのポイントはクスノキでの祈念。
祈念がどんなものか、は自分の身をもって感じ取って理解しなさいと千舟から言われ、玲斗は他の人から教えてもらうのも禁じられていた。
それでも祈念について知っていそうな人を見かけては少しばかり探りを入れてみる。口の固い人もいれば、ぽろっと少しばかり情報をこぼす人もいる。
玲斗は祈念に来た人たちの記録を電子化する際に、新月と満月の日と前後に祈念する人が集中していることに気づく。さらに同じ苗字の人が祈念に来ていることから、そこにも何かしらの関係性があると気づき始める。
この少しずつ明かされていく祈念の仕組みがどんどん読み進めていく楽しさを与えてくれる。
・不審な動きの父を追跡する娘
特に祈念で中心人物だったのは佐治父娘。父親の浮気を疑っていた優美が、父の行動を追っていたらクスノキがある月郷神社に辿り着く。祈念を覗き見しようとしているところを玲斗に見つかり止められそうになるが、彼女が必死にお願いしてくるものだから、好奇心が刺激されて、つい禁止されている祈念の覗き見をしてしまう。
そこで目にした祈念の様子は異様そのもの。不思議な鼻歌を歌っているだけという。
ますます謎が深まる。一体、これが何を意味しているのか。その謎と浮気疑惑とがどう関係しているのか。
さらに大学生で見た目の綺麗な優美に少しずつ惹かれていく玲斗の様子と、この父娘と玲斗の動向が最後まで目が離せない。
そして真実が明らかになった時、その後に彼らのとった行動が実に感慨深い。
・渋々の裏側にある真相
彼らとは別で定期的に祈念に来る大場壮貴。いつも乗り気ではなく、非常に嫌がっている。それでも福田に連れられて仕方なく祈念しにいく。そして案の定ダメだったと言って戻ってくる。
そんなエピソードが何度かある。
佐治父娘のエピソードと並行して、定期的に登場する壮貴。彼がなぜそこまで嫌がるのか。そのエピソードがやがて語られることになる。その事実に隠された思いが実に深い。よくここまで一人の人物像を描き上げるものだと感心してしまう。
佐治父娘のエピソードとは違った温かさが伝わってくる展開も読み応えが十分だった。
・千舟が顧問を去る時
そして全般を通じて、千舟と玲斗の関係も興味深い。
なぜ千舟が玲斗の釈放に協力してくれたのか、玲斗の行動に、苦い表情を見せて、みっともないと注意したら、言葉遣いを直したりする様子は親子のようであって、そうではない適度な距離感。
千舟と玲斗の母の間のエピソードの複雑さから始まり、ヤナック・コーポレーションの社長 柳澤将和が千舟を顧問から外そうとしている気配が出ていたり、彼女が立ち上げたホテル柳澤の存続についての苦闘など、ビジネスの駆け引きも時々出てくる。決して、その内容がメインではないのだけれど、そのエピソードにも深い意味が隠されている。
その隠されていたものが最後の最後で明らかになった時に、全てのピースが一つになった感じになる。
いくつかの人間関係がクスノキをきっかけに広がっていき、それぞれに心の琴線に触れるエピソードになっていると感じる一冊だった。
読了日:2023年12月17日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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