こんにちは、Dancing Shigekoです!
今日から10月です。
さて今日は見直し目標よりも1日前倒しで読み終わった伊坂幸太郎作品 小説『AX』を紹介します!
[基本情報]
著者: 伊坂幸太郎
出版社: 角川文庫
出版年: 364ページ
[登場人物]
兜(三宅)
表向きは文房具の営業。妻と息子の三人家族。思い込みが激しく一度思い込んだらその考えから逃れられなくなる。恐妻家。裏向きの顔は殺し屋。
克巳
兜の息子。いつも妻にビクビクしている父をそれとなく支える。
医師
医学用語を使って兜に仕事を依頼する。手術(殺し)の内容を機会的に伝える。
[内容]
兜は家族ができて以来、裏稼業から足を洗いたいと考えていた。医師にそのことを伝えると、もう少し仕事をしてもらわないといけないと言われる。悪性(悪者)の手術(殺し)ならと仕事を受けていた。しかし、その時でも命を奪った相手にも家族がいるのだと思うと、辞めたいと思うのだった。
そんなある日、同業者で同じように足を洗いたいと思っている男と会う。その男との出会いがきっかけで、医師に対して、もう手術をしないと宣言するのだった。
[感想]
兜が家族を守る為に取った行動が、息子 克巳の視点からも描かれる作品。
・こういう業界が存在するのだろうと思わせる
表向きには文房具の営業。至って普通のサラリーマン。その生活の中には一般人とも親しくなる。ボルダリングをしていた時に親しくなる人物や、営業先の警備員と仲良くなるなど。そういった一般的な人付き合いと並行して、機械のような医師から仕事を受け取り、裏稼業も行う。
そして家では、妻と息子の三人での生活。妻の会話には可能な限りついて行くような気配を見せ、常に息子のこれからのことを考える
どれが本当の顔なのか。その答えは、お父さんは何者?と聞かれた人が「君のお父さんだ」と答えるあたりに表れている。
途中から兜の時間軸と、10年後の克巳中心の時間軸の物語が並行して進むようになってきたあたりは種明かしを体験しているようで面白い構成だった。
・兜は幸せだったのか
裏稼業については家族に話すことができず(当然)、一人で抱えている兜。家では妻の機嫌を損ねないように常に細心の注意を払う。その一つ一つの描写が面白い。実際にありそうな会話でいて、やや兜の反応が飛びすぎているように感じる。
そんな兜、家族のために朝4:00に起きて、スキーウェアなどで完全防御して、フルフェイスのヘルメットまでかぶってスズメバチの巣を退治する場面がある。その奮闘っぷりに哀れさを感じ、頑張った割に、最後、汗だくになって倒れている様子を変なやつとして見られるので終わるあたりに兜の人生の縮図が出ていたように感じる。本人は精一杯頑張っているのに、その頑張りの数%程度しか伝わっていないという感じ。その感じには共感。
思い込みが激しく、人とは違った独特の感性で勘違いしていく様子。爆弾魔の一味と思って殺人をしていたけれど、本当にそうなのか、と最後まで真相がわからない部分があったものの、その独自性が兜らしさを形成していたと思う展開だった。
・首都圏を中心に
伊坂作品と言えば、仙台市が舞台になる印象が強い。そして仙台は自分にとっても馴染みのあるところだから、身近に感じる。この作品は、首都圏が中心。克巳が住んでいたのは埼玉だったように思う。東京はまだまだイメージが湧く場所が少なく、兜や克巳がそのあたりを活動していたのだと感じるにとどまった。
どこか切なさが残り、それでいて、きっとこれでよかったのだろうと思わせる展開の一冊だった。
読了日:2021年10月1日
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それでは、また次回!
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