映画『ヴェンジェンス』静かに見守る刑事が英雄になる
- Dancing Shigeko
- 2022年9月5日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年7月27日
こんにちは、Dancing Shigekoです!
映画の感想を少しずつタイムリーにアップ!
今回は映画『ヴェンジェンス』を紹介します!
[基本情報]
原題:Vengeance: A Love Story
監督:ジョニー・マーティン
脚本:ジョン・マンキウィッツ
原作:ジョイス・キャロル・オーツ『Rape:A Love Story』
製作:マイケル・メンデルソーン
ニコラス・ケイジ
製作総指揮:ハロルド・ベッカー
マイク・ナイロン
リシャール・リオンダ・デル・カストロ
パトリシア・エバリー
製作会社:パトリオット・ピクチャーズ
サターン・フィルムズ
配給:フィルムライズ
上映時間:99分
[登場人物]
ジョン・ドロモア:ニコラス・ケイジ
過去に勲章を受けたことがある英雄的な刑事。相棒が死亡する事件に巻き込まれ、ジョンも負傷。30日安静にしているように言われている中、バーでシングルマザーのティーナと知り合う。
最近のニコラス・ケイジ作品は、おとなしい印象が強い。この作品でも言葉数は少なく、眼力で物事を語っているように見える。
ティーナ(マルティナ・マグワイア):アンナ・ハッチソン
夫をガンで亡くし、娘と二人で生活。友人宅のパーティの帰り、襲われる。
バーに現れ、ジュークボックスにコインを入れて徐に踊り出すあたりが、いかにもアメリカンと感じてしまう。
べシー・マグワイア:タリタ・ベイトマン
ティーナの娘で12歳。いつまでも子供扱いされていることを嫌がっている。
ハリウッド映画に登場する子役は、どうもみんな似たような印象がある。
アグネス・マグワイア:デボラ・カーラ・アンガー
ティーナの母。襲われたことを聞いて、ティーナとべシーを家に迎える。
神経質そうでいて、べシーには優しく接する。感情を押し殺している感じの表情に見える。
ジェイ・カークパトリック:ドン・ジョンソン
敏腕弁護士。加害者側の弁護を高額で引き受け、審問でその腕前を存分に発揮。
悪徳弁護士向きな見た目。以前、見た映画『ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密』にも出ていたらしいけれど、印象が残っていない。
[内容]
シングルマザーのティーナは娘のべシーとパーティに参加していた。その帰り、彼女を知る男たちに襲われる。べシーは舟小屋から逃げ出し、助けを求めて歩いていたところ、通りがかったジョン・ドロモアがべシーを見つける。彼女に言われて、見に行った舟小屋に倒れている女性を見つける。彼女は、少し前にバーで会って、話をしたばかりのティーナだった。
意識を取り戻したティーナは恐怖に怯えていたが法廷に立ち審問を受ける。暴漢を刑務所に突き返すつもりでいたが、加害者の弁護士カークパトリックの話術で無罪になりそうな結果となる。法廷で傍聴していたジョンは、その結果を見て、一つの決心をしているのだった…
[感想]
婦女暴行事件をテーマにした作品。
・自分を知る女性に話しかけられる
張り込みしていた男を確保しに行った時に相棒を失う。その相棒は、妻に大きなダイヤの指輪をプレゼントする!と自慢をしていた。これまで散々嫌味を言われていた男に対抗できると息巻いていた。その彼を失って、ジョンも肩を負傷してしまう事件。
それからどれだけの時間が経ったのか、ジョンは謹慎という意味だったのか30日間は出社するなと言われていた感じのところでバーに行く。
目を見張る女性ティーナが入ってきて気になっていたら、彼女の方から話しかけられる。それから二人でしばらく話をして過ごしていた。娘を迎えに行かないといけない、と言ってその場はお開きになった、ティーナが電話番号を残していく。
そういう出会い方だったからなのか、それとも話の内容がよかったのか、何かジョンは感じるものがあったのだろうと思われる。
・暗い夜道を通ったのが…
新しい恋人宅のパーティからの帰り、娘と二人歩いて帰る。
暗いけれど、近道と言って、森の中を突っ切っていく。そこは綺麗な浜辺。そんな夜道を女性二人で歩くのは危ないのではないか、と思っていると案の定、チンピラに絡まれる。彼らは彼女のことを知っている。どうやら高校かどこかの同窓っぽい気配。
独立記念日、楽しいことしようと、強引に彼女を小屋の中に引っ張り込む。最初は娘のべシーにも暴力を振るおうとしていたけれど、逃げられたものだから、放っておく。
そんな展開。
暴力を振るうそのチンピラが問題なのは理解。しかし、夜道を安心して歩けない環境って大変。
・裁判というのは…
犯人はすぐに捕まり、審問にかけられる。そこでの加害者側の弁護士カークパトリックの言い分がひどい。
関係を持ったことを認め、それは合意のもとだったと言い切る。しかもパーティで19人で樽5個分のビールを飲み干したという説明をして、いかに泥酔していたかを語る。
作品後半に、アメリカにはどんな人物にも弁護される権利があると言う。だからと言って、嘘をついて無実を勝ち取ろうとするのは、間違っているのではないのか。そして、その無罪放免になったチンピラがまた同じ犯罪を犯したら、どう言う扱いなのだろうか。
それでもカークパトリックは陪審員にどっちの物語を受け入れてもらうかだけの話と割り切っている。こう振り返ると、カークパトリックのやり方が弁護士として悪質だったのだと信じたい。
実際の裁判では正しく(何を正しいと言うかも人次第なのだろうけれど)、判断されていることを願う場面だった。
・ジョンを動かしたもの
その審問の様子を見ていたジョン。決して口出しはしないものの心に強く感じている気配は出している。今にも手を出しそうな感じではあるものの、静かに見守っている。
後日、チンピラの一人が、ティーナの恋人に絡んでいるところにすかさず助けに入る。さらにナイフを出したたけで、容赦無く発砲。救急車と検視官を呼んで、現場の処理をさせる。同僚からの取り調べには正当防衛だったとして、ジョンは何事もなく、済まされる。
その後も、ナイアガラの滝の崖を下調べした上で、チンピラを呼び出したり、モーテルに呼び出したり。
裁判がダメなら、自らの手を汚す、と言う形の展開。法律的には許されない行為だけれど、道徳的には理解できてしまうジョンの行動。
彼をここまで動かしたのは、ティーナとのわずかばかりの会話だったのだろうか。一体、どんな会話が心を動かしたのだろうか。
・生きていてよかった
そしてティーナ。べシーが話しかけても反応しないものだから、襲われた直後は、もしかして死んだのかもと思ってしまう。さらにジョンが駆けつけて首に手を当てた時の様子からも死んでいるのかも、と感じさせる。
その後、病院に搬送されていく様子が映し出されて、まずは生きていてよかったと思う。
しかし、彼女はそうは思っていない。暴行された時点で自分の人生は終わっていたと言う。だから、自らナイアガラの滝に身を投げようと思って、ふらふらと向かっていく。そこをジョンが止めに入る。
ティーナはその後も不安を抱えての生活を送っていたけれど、最終的にはカリフォルニアに引っ越して新たな生活を送ることを決めるほどまでに立ち直る。
こういう場面を見ていると、どんなに辛くても生きていたら、死んではいけない、って感じる。ジョンがべシーに言っていた言葉が印象的。どんなに辛くても、やがて前に進める程度には忘れることができるから、強く生きてほしい、と言った感じのこと。前に進める程度には忘れることができる、と言うのが共感できる部分だった。
裁判の限界を感じつつ、人生には可能性を感じる作品だった。
鑑賞日:2022年8月28日
皆様の感想も是非お聞かせください!
それでは、また次回!
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