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執筆者の写真Dancing Shigeko

小説『虚ろな十字架』殺人の贖罪のあり方を問う


 こんにちは、Dancing Shigekoです!

 韓国での感染者は4115人と増えている。日本の感染者が減っているのは何故なのだろう。


 さて、今回は東野圭吾作品 小説『虚ろな十字架』を紹介します!

[基本情報]

 著者:東野圭吾

 出版社:光文社文庫

 出版年:2017年

 ページ数:367ページ


[登場人物]

中原道正

 動物の葬儀屋をしている。11年前に娘を殺される過去を持つ。


浜岡小夜子

 中原の前妻。通り魔に刺されて死亡する。


仁科文也

 小夜子を殺した町村作造の娘 花恵の夫。


[内容]

 浜岡小夜子が夜の帰り道に何者かに刺されて死亡した。そのことで、元夫の中原のところに警察が聞き込みにやってくる。

 翌日、小夜子を殺したという男性が自首してきて、事件は解決したように見えた。

 ところが、逮捕された男を死刑にするために小夜子の母 里江と話をする中、生前の小夜子の行動を詳しく知る。やがて中原はそこから、事件の違う面に気づき始めるのだった。


[感想]

 一人の女性の殺人事件につながっていく過去の深い闇を感じる一冊。

・一見すると通り魔事件に見える内容も、追いかけていくと悲しい過去

 夜中の帰り道に男性に刺される。お金欲しさに殺したという。一見、強盗目的の殺人。悪質な犯人のはずがどこか反省していない。その様子から、徐々に疑問を抱き始めるのが中原。そして生前の小夜子の取り組みを追いかけていくうちに、一つの土地が注目されていく。そんな展開。

 最後にたどり着くにつれて、事件の真相がわかっていく。そこに待っていたのは、とても悲しい事実。最後まで息つく間がない展開だった。


・小夜子の取り組み、死刑廃止論という名の暴力

 実際にこういった意見の人がいそうと思わせるほどに小夜子はリアルな記事を書いている。子供を殺された被害者である小夜子。犯人を死刑にしても報われない。それでも生きているという事実はもっと報われない。せめて犯人に死んでもらったら、多少なりとも何かが動き始めるという考え方。

 殺人事件の被害者になるという立場には決してなりたくないものの、小夜子のこの手記はなかなか衝撃的なものがあった。

 また中原が振り返り娘が殺された時の状況、その時の心境なども実にまざまざとしていた。殺人というのが、いかに残された人にも大きな影を落とすのかを考えさせられる展開だった。


・罪の償い方はどうあるべきなのか

 この一冊は殺人という罪を犯した時に、どのように償うべきなのかを問うている一冊だと感じた。いくつかの殺人事件が取り上げられていて、その犯人と向き合う遺族たち。さらに後から、当時の犯人と関わった人たちから見た、犯人の思い。

 いろんな形での罪対する償い方が描かれていたように思う。殺人はあってはいけないと思う。しかし、世の中から殺人がなくならないのも事実。その被害者、加害者となった時、どういう対応が求められるのか。


・登場人物一人一人に過去がある

 中原の娘が殺された事件の話、小夜子が中原と別れた後に行っていた仕事の話、さらに仁科史也の高校の頃の経験、さらに史也と出会った花恵の過去、そこまでの出来事など、本当にそういった人生を経験してきた人物がいるように感じる。このリアリティが恐ろしい。

 そこに富士宮市の青木ヶ原という樹林が登場して、現実にあった出来事を読んだような錯覚に陥る一冊だった。


 殺人の罪は償えるのか、を問われる内容だった。


 読了日:2021年11月25日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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