こんにちは、Dancing Shigekoです!
ページ数少なめの本を読んでみる。
今回は小説『藪の中』を紹介します!
[基本情報]
著者:芥川龍之介
出版社:講談社文庫
出版年:2009年
ページ数:155ページ
[登場人物]
省略
[内容]
六つの短編からなる一冊。
藪の中
藪の中で見つかった男性の死骸を巡って証言を聞いていく。その内容はそれぞれに違うのだった…
羅生門
羅生門の上で落ち着こうとした男が老婆を見かけ、服を剥ぎ取るのだった。
地獄変
絵師の良秀は大殿様に言い付けられて、地獄変の屏風を描いた。絵を描くために実際に恐ろしい世界を見る必要があるというのだった…
蜘蛛の糸
地獄に落ちた犍陀多。彼の慈悲の心を見ていた御釈迦様が蜘蛛の糸を垂らす。それを登っていく犍陀多だったが…
杜子春
生活に困った杜子春は西の門で佇んでいた。老人に声をかけられ、言われた通りにすると金が見つかり、贅沢三昧の生活をするのだったが…
鼻
禅智内供は鼻が長いことを気にしていた。短くなる方法を知り、短くするのだが、周りからはなおも笑われるのだった…
[感想]
それぞれに個性的な作品。
<主題はいろいろ>
・いつの時代も殺人事件
最初のエピソードは藪の中の死骸に関する調査を描く。平安か、江戸のような時代背景でも、殺人が起きたら聞き込みをするあたりが興味深い。今みたいに科学技術が発達していない頃は、それこそ足で捜査していただろうから、犯人が見つかる確率は低かったのだろうなと感じる。
この物語では犯人探しが重要なのではなく、殺人に直接関わった(殺された本人も含め)言うことが全く合わないところに面白さがあったと思う。
一体誰が事実を言っているのかと、考えさせるのを狙った一話と感じた。
・かの有名な羅生門
高校か中学でも一度は読んだことのある羅生門。改めて読んでみると、一言。不気味。死体がたくさん転がっている門と言うのは、怖くて近づきたくないもの。
そして結構、門のてっぺんと言うのは広いものなのだと感じる。
門を見るのが怖くなりそうなエピソード。
・教訓含みの杜子春
不思議ストーリーだけだと思ったら、教訓のようなメッセージ性のあるエピソードも一話。
西の門で生きていても仕方ないから自殺でもしようかと考えている杜子春の前に老人が現れ、どうしたのかと尋ねてくる。それで素直に今後のことを悩んでいると言った回答をすると車ほどの金が埋まっていると言って去っていく。杜子春はその金を掘り当て、豪遊。
お金がなくなると周りの人たちは急に冷たくなる。そんな経験を二度ほどにして、人生の虚しさ、薄情さを痛感。
三度目は金を探さずに仙人になりたいと言う。しかしその修行の結果、杜子春は人生を見つめ直すという流れ。
人生で一番大切なものは何か?語りかけてくるようだった。
<個性派登場人物>
・鼻の長い僧
六つの作品の中で特に印象的だったのは、鼻の長い禅智内供。顎よりも先まで伸びていて、ご飯を食べる時には二人がかりで食事するのだとか。鼻を弟子に持ち上げさせて、食事という。
ある時、鼻をお粥にジョポンとつけられて、酷い目に遭ったとか、弟子からは鼻を見られては笑われると言う。
その見た目を想像すると、象のような顔なのかなと思ってみる。実際はどうなのか。
・絵師 良秀
見た目が陰気な絵師。地獄変の屏風を描いたと言うこの絵師はとにかく、彼自身が地獄変から飛び出してきたのではと思う見た目を想像する。ちょうど映画『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのようなイメージがある。かなり不気味な絵師と見た。
<日本を飛び出して>
・洛陽の西の門
舞台は日本だけではなく、唐も出てくる。街並みの描写があるわけではなく、門のところで黄昏ている、佇んでいるだけの描写ではあるものの、西の門という表現一つに、四方に門がある街が想像される。昔の中国の都は、四方が壁で囲まれていて、門がある様子が思い浮かぶ。
・地獄にも堕ちる
一つは天から御釈迦様が地獄を見ている物語。その地獄の描写が、血の池や針の山など。さらに良秀が出てくるエピソードでも地獄の描写が登場する。その地獄の絵と言うのは、どの時代も同じ恐ろしい世界に見える。
閻魔大王が出でくるエピソードもあり、芥川龍之介は地獄に特別な思い入れがあったのかと思うほど。いかに?
日本を代表する作家の作品に触れるのも良いものであると感じる一冊だった。
読了日:2022年10月13日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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