こんにちは、Dancing Shigekoです!
一冊読み終わるのにやや間が空いてしまった。
今回は小説『爪と目』を紹介します!
[基本情報]
著者:藤野可織
出版社:新潮文庫
出版年:平成28年
ページ数:173ページ
[登場人物]
割愛
[内容]
3つの短編からなる一冊。
爪と目
母が亡くなった。そして父は、新しい女性と暮らし始めた。その継母は古本屋の男性と会うようになっていた。”わたし”はそんな継母の様子を見て育つ。
しょう子さんが忘れていること
しょう子はリハビリのために入院していた。いつも朝になるとすべてのことを忘れ、夜に思い出している。長女と孫娘が見舞いに来てくれるが、同じ部屋に入院している若い川崎くんがお気に入りだった。なぜリハビリが必要なのか分からないくらい元気な川崎くんだが、しょう子はある時、彼の足を見て、もう顔を見たくないと言い出すのだった。
ちびっこ広場
友人の結婚パーティーに参加するために準備をしていた私。大樹は五時に帰ってくることになっていた。帰ってきたら留守番をしてもらって、出かけていく予定だったが、大樹は帰ってくると「ママ、いかないで」と駄々をこねる。理由を聞いても教えてくれず、結婚パーティーは夫が帰ってきてから遅れて参加するのだった。
[感想]
ページ数が少なめということで借りて読んだ一冊。
解説のホラーという言葉を見かけていなかったら、ホラーとは思わなかったかもしれない。
<爪とめ>
・母の死因は?
主人公はどうやら幼稚園児の”わたし”。彼女から見た世界が描写されている。かなりしっかりした園児だと思う部分はあるけれど、母親がベランダで亡くなっていた、ことがきっかけでベランダ近くの窓に近づけなくなる。
母親が亡くなった時にベランダに出る戸の鍵はかかっていたという。浮気をしていた父が意図的に閉じ込めたのか?と思われるような描写があり、真相は闇の中。こういった描写が普通にある辺りがホラーだったのか?
・古本屋の男性との関係
父の浮気相手だった女性と一緒に暮らすようになる。その女性は、古本屋の男性と関係を持つようになる。ところが、ブログを読み漁ることに忙しかった継母は徐々に古本屋との連絡を億劫と感じるようになり、そのまま静かに消えて行こうとする。
ところが、家に訪問してきたので、翌日、最後に会うことにする。関係を持った後、男は、継母のコンタクトレンズを舐めて取り出すという描写がある。
この描写が随分異様と感じた。なぜそんなことをするのか。目を舐めてそのままコンタクトを取り出すって、かなり不気味。考えてみるとこの辺りはかなりホラーだったかもしれない。
<しょう子さんが忘れていること>
・その足を見て何があったのか
しょう子が気に入っていた若者 川崎くん。彼がなぜ入院しているのか。その理由を詮索するのは失礼と皆が思っている。それで、深く聞くことなく、日々を過ごしている。すると彼の足を見た時に、突如、自分の小ささを感じたのか、川崎くんと会いたくなくなる。子供たちにも会わないように伝える。
なぜそう感じたのか。赤茶けた脚と記載があったけれど、火傷の跡ということなのか。そんなにもショックを受けるようなものだったのか。
ホラーというよりは、何だろう?
<ちびっこ広場>
・予定のある時に限って
普段は一人で留守番をしてくれる大樹が、結婚パーティーに行く予定のあるこの日に限って、「行かないで」とねだる。
何か大事な予定のある時に限って、思い通りには行かないという典型。こういう出来事って本当にある。この時の心境ってどうなのだろうと感じずにはいられない。息子が一番大事だから家に残るのでいいよ、と言うその姿勢はすごい。
確かにパーティーに遅れる理由が子供だったら、そっちを優先するだろうと感じる。人ごとではない感じの描写が印象的。
・子供には怖いもの
四時四十四分にちびっこ広場にいると呪われて少女が誘いに来るという。その言葉を信じて、一人になりたくないと言い出す大樹。電話がかかってくると言うので、結婚パーティーに出かけていた母親が夫に電話をしても出させてくれなかったのだと。
この子供の心境。きっと必死だったのだと思う。こういった怖いという感覚。なぜ大人になると薄れてしまうのだろう、そんなことを考えさせられる内容だった。
全体的に自分の中では謎が残る一冊だった。
読了日:2022年11月10日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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