
こんにちは、Dancing Shigekoです!
今回は小説『残り全部バケーション』を紹介します!
[基本情報]
著者:伊坂幸太郎
出版社:集英社文庫
出版年:2015年
ページ数:302ページ
[登場人物]
溝口
毒島のもと、当たり屋や恐喝などをして生計を立てている。
岡田
溝口の相棒だったがカタギの世界で生活をしたいと言って辞めていく。
太田
岡田の後の溝口の相棒。
高田
太田の後の溝口の相棒。
[内容]
溝口は当たり屋や恐喝をしてお金を巻き上げていた。その実行は相棒の岡田が担当。その岡田が仕事を辞めたいと言い出したため、友達ができたらいいと答えられる。そして岡田は見ず知らずの人に電話をかけて友達になって、去っていくのだった…。
[感想]
溝口の悪行をコミカルに描く作品。
・悪いことをしているのに…
溝口と岡田、太田らとの会話が軽快に行われる。その会話のテンポがよく、コミカルな感じ。どうもその会話を聞いていると悪い人たちではないような気がしてくる。しかし、実際には悪いことをしている。
テールランプが光らないようにブレーキは踏まず、サイドブレーキでスピードを落として、後ろからぶつからせる。
見ず知らずの女性を誘拐して、目的地に連れていく。
と行動だけを見たら悪い人なのだけれど、どこか憎めない人間味?が出ている展開のエピソードが多かった。
・悪人でも悪い行為は許せない
岡田は目的地に向かう途中で小学生を見かける。明らかに虐待されている感じで、おどおど、背中にはあざがある。その小学生が気になってしまう。
そして虐待している父親を戒めるために、いろんな作戦を取り始める。ターミネーターを見させておいたり、飲み屋で科学的な話を聞かせたり、新聞記事に細工を仕込んだり。それらの下準備が終わると、いざ、その父親に会いにいく。しかもその名目は未来から来た自分という扱い。虐待を続けると、今度はこんなことになる、と自分の体にあるアザを見せる。
未来から来た、というのを信じさせるために、事前にいろんな情報を吹き込んでいるのだけれど、それらが見事に結果につながっていく。
虐待している父親に、力で説得しようとするのではなく、わざわざ手の込んだことをして、気づかせようというスタンス。こういった行動を見ていると、岡田は悪人ではないし、悪いことをする人は許せないタチなのだと感じた。
・見ず知らず家族と友達になる
足を洗いたいと思っている岡田。溝口はやめたいのなら、見ず知らずの人と友達になったらいいよ、という。それで岡田は実際に見ず知らずの人に電話をする。その電話した相手が、今日、妻と離婚しようとしている男。なぜか、その家族3人と一緒に食事に出かけるというメチャクチャな物語が展開していく。
こう言った飛んだ発想の世界観が、伊坂幸太郎作品っぽさを感じさせる。どんな時でもこの独特の世界を作り出すのだから面白い。
・小学生の頃の思い出
クラスにいた岡田くんがいつも一人で考え事をしている。その様子を見守っているクラスメイトの僕。僕の方は父親がスパイをしていると信じている変わり者。この二人が、帰り道にばったりあって、その時に交わした言葉がきっかけに仲良くなっていく。
そんな存在の岡田。
この昔話がどう関係するのかと思っていたら、ちゃんと繋がっている。その思い出も興味深い。小学生らしい出来事。その昔を思い出している様子が、自分の小学生時代を振り返っているような気持ちにさせられた。(もちろん、ここで描かれているような出来事はなかったが)
どこか懐かしい感じがする描写だった。
・溝口はただの悪人ではなかった
誘拐した女性を目的地に連れていく途中で検問がある。そこは何事もなく通り抜けたのだけれど、トランクに鞄が入っていることに気づく。中身を見てみたら、大金が入っている。その大金があったら、仕事やめて、残りバケーションだな、などと言いながら、女性を目的地に連れていくのを忘れる間抜けっぷり。
さらに気まぐれで当たった相手のトランクには銃がたくさん入っている。そのことについて問い詰めようとしたら、通り過ぎて行こうとしたトラックに撥ねられれて骨折してしまう。と言ったドジをする。
そんな入院生活中に、溝口の雇い主である毒島も入院していると知る。しかも同じ病院にいると。溝口の相棒 高田は挨拶に行く。そんな折、銃を持った男が毒島を狙っているという噂が流れ始める。
さらに溝口と同じ部屋に入院している教授が意味深な発言をしているという。
と言った感じで一連の出来事から毒島を狙っている人物が誰なのかが見えてくる。
そんな展開だったのに!
まさかの結末が待ち受けていた。溝口って単なる悪人ではなかったのだな、と感じる結末が待ち構えていた。意外な結末という印象。
読み終わると、不思議な感じの悪人像が残る作品だった。
読了日:2022年3月29日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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