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小説『死刑囚メグミ』メグミを守るために!

  • 執筆者の写真: Dancing Shigeko
    Dancing Shigeko
  • 2023年11月21日
  • 読了時間: 4分

 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 FM802 浅井博章氏のモーニングストーリーで紹介されていた本を読み進めてみる。


 今回は小説『死刑囚メグミ』を紹介します!


[基本情報]

 著者:石井光太

 出版社:光文社

 出版年:2019年

 ページ数:357ページ


[登場人物]

小河恵

 本作品の主人公。マレーシアの空港で覚醒剤を所持していた容疑で逮捕され死刑判決が出る。

東木幸介

 東亜新聞バンコク支部で働く記者。小河恵とは小学六年生の時の同級生。

鹿沼純

 恵が面倒を見ることがあった小学生。鹿沼好江の息子。

トニー

 恵にゾッコンのイラン人。鈴木社長と一緒に仕事をしている。

小河駒子

 恵の母。五所川原から恵と会うためにマレーシアにやってくる。


[内容]

 小河恵がクアラルンプール国際空港で覚醒剤密輸の容疑で逮捕された。一審の結果、死刑が宣告される。彼女と小学校で一緒だった記者の東木幸介は恩師から連絡があり、彼女を助けて欲しいと頼まれる。

 幸介はマレーシアに行き、恵と面接。事件について調べていくのだった。


[感想]

 マレーシアで死刑を宣告されたメグミを助けようと動く新聞記者を描く作品。

・地方育ちの一女性の半生を描く

 本作品は死刑囚メグミを中心に描写が進んでいく。決して裕福とは言えない家庭で育ち、村八分にあい、トランスジェンダーの友人ができ、母親と思っていた人は実は育ての親で、実の母親と知らずに接していたおばちゃんが実母だった、など、実に起伏に富んだ人生が描かれている。

 正直、人生を投げ出したくなるのではないかと思いたくなるような苦境続きの彼女。それでも精一杯生きていく様子には、生きる力強さを分け与えられたと感じる。

 逮捕までどちらかと言うと常に苦しい状況だった彼女。そんな生活をしていても全力で頑張る様子に、とても自ら進んで覚醒剤の密輸をしたとは思えないと感じる展開になり、やがて納得の理由が発覚すると言う流れは、実在したのではないかと思えるほどのリアリティだった。


・二つの時間軸で描かれる

 恵が逮捕される場面から始めり、話は彼女の生い立ちへと場面が変わる。青森の五所川原での生活から、小笠原へ引っ越した小学校低学年の頃、再び五所川原に戻り、と言った感じで彼女の物語が進んでいき、区切りのいいところで、現在の幸介の調査の様子に話が移る。

 幸介は恵がどんな生活を送っていたのか、彼女が覚醒剤を密輸することになった背景を探ろうと関係者に話を聞いていく。現在の話をしながらも、関係者から聞いているのは過去の出来事の話で、第三者から聞いた恵の話が描かれる。断片的に繋ぎ合わせられていく形で描かれていて、その直後、恵視点のエピソードに戻り、彼女のエピソードが一つ前で幸介が聞いてきた話とつながっていくような描かれ方になっている。

 視点は変われど、常に中心に恵がいて、逮捕された直後の口を閉ざす恵の印象から全く違った印象の人物像が最後には描かれている。

 この変化の付け方が実に読み応えがあった。


・景気の煽りを受けた人々

 覚醒剤の密輸。キロ数億円で売買される代物を40万円のバイトで知らず知らずに運ばされている。

 そう言った仕事に足を突っ込んでしまったきっかけというのがバブル崩壊、リーマンショック、アメリカ同時多発テロなどの社会情勢の影響を受けている。

 たまたまその煽りを受けてしまったと言うようにも取れる。運が悪かったのか、必然だったのか。

 バタフライエフェクトと言う表現が途中で出てくるけれど、世の中は複雑に影響しあっていると言うことなのだと思う。

 と思う反面、ただのこじつけなのでは?と感じる部分もある。景気の煽りを受けても真っ当な道で生活した人もいるだろうと思うと、言い訳なのかもしれないとも感じてしまう。

 何か問題に直面した時に、責任の所在を不可抗力のところに持っていくことで、今の境遇に納得しようと言うことのようにも思えるし、そう言った心境になってしまうほど大変だったのだと、自分の中では落ち着いてみた。


・マレーシア クアラルンプールでの豪遊

 全体的にメグミの苦しい生活が中心だったものの一時的には華やかな生活もしている。

 社長と呼ばれる男性との出会いからホームパーティに参加。かなり豪華に楽しんでいる感じが描かれる。

 さらに豪遊は日本にとどまらず、マレーシアに渡っても続く。その宿泊していたホテルの豪華さ、屋上にプールがあるホテルでの宿泊ってどんな感じなのだろうと思ったり、マレーシアでの滞在を満喫しているのが伝わってくる。

 また気候の描写も印象的。いつも夏なのだと言うのがわかる描写が、タイミングよく描写されて、実際にマレーシアに行った気分になるから不思議。

 これまであまり意識していなかったけれどマレーシアに行ってみたいと思う内容だった。


 最終的に出た結末に安堵する一冊だった。


 読了日:2023年11月19日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!


 
 
 

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