こんにちは、Dancing Shigekoです!
今回は小説『死にたいって誰かに話したかった』を紹介します!
[基本情報]
著者:南綾子
出版社:双葉文庫
出版年:2023年
ページ数:273ページ
[登場人物]
呉田奈月
病院事務。「生きづらさを克服しようの会」を立ち上げる。引きこもりの兄 徹と一緒に暮らすようになる。
郡山雄太
病院の清掃員をしている。奈月に連絡をして会に加わる。
呉田薫
奈月の兄。元医者、今はスーパーでアルバイトをしている。
近藤茜
薫の妻・今日子の妹。セレブな生活をしている。
[内容]
奈月は職場でいつも冷ややかな視線にさらされていた。生きづらいと常日頃から感じていた。ある時、その生きづらさについて誰かと語り合いたいと考え、「生きづらさを克服しようの会」の募集を始める。
その会にやってきた病院の清掃員、雄太と二人で定期的に会を進めていく。やがて奈月の兄 薫と、薫の妻の妹 茜も会に加わるようになり、毎月第二第四金曜日にお題目を決めて、ただ語り合うよう場を共有するようになるのだった。
[感想]
生きづらさを克服したいと考える男女4人が語り合う作品。
・通称「生きづら会」
最初は二人から始まった生きづらさを克服しようの会。奈月と雄太の二人だった頃は、どちらかが話すとそれに対して反論意見や、自分の方がもっと酷いという惨め自慢のような場になっていた。
それが薫の傘下で、決して相手の話に意見はしない。ただ頷くだけ、というルールを作ることでだいぶ様相が変わっていく。
結局、意見を言い出した時点で、それは慰めではなく、一方的な押し付けになるというか。何かを話したい人がいる時は、静かに受け止める器量が必要なのだと強く思う流れだった。
・過去を語る
奈月も雄太もいろんな過去を持っている。その中のいくつかは、自分でもそんな経験したかもなぁ、と思う部分もあれば、到底、体験することがない次元の残念な感じになっている話も飛び出してくる。
そういったそれぞれの話(どんな内容だったか、あまり具体的な例は出てこないけれど)、を読み進めているうちに、自分の過去はどうだっただろうか、と振り返ってみてしまう。この小説を読んだことがきっかけで消え掛かっていた小中学生、高校生、大学の頃を思い出す。自分も誰かにあてもなく話をして、ただただ聴いてもらう場を求めているのかもしれない、とみんなで語り合っている様子を読み進めているうちに感じた。
・何の集まり?
奈月の母親がガンで、先が短いと知り、会いに行こうという話になる。最初は奈月が一人で行くと言っていたものの、本当に行くのか?と疑問を呈する人が現れ、行っても会わないのでは?とか、いろんな憶測が飛び交い、結局、生きづら会の四人がみんな揃って富山に出かけていく。一緒の宿に泊まって食事をとって、翌日に現地に向かう。
そんな旅行の中で、奈月が自分たちは一体、何の集まりと疑問に感じている。見るからに家族連れや、大学などの友人といった集まりが周りにいるとわかっている中で、異種業の人たちが集まっている4人組。
こんな凸凹というか、不揃いの人たちでの旅行というのも悪くないと思う反面、自分にはなかなかできる経験ではないかなと感じてしまう。どうしても家庭第一に考えてしまう自分にとっては休日に家族以外の誰かと旅行というシチュエーションは当面起きそうにないだけに、羨ましく感じるのと同時に、不思議な感じに襲われた。
一方の奈月は家族以外の集まりであることに、これは一体どんな集まりって思っていて、結局、自分にはないものがよく見えてしまうものなのだと感じた。
人それぞれに抱えている問題は違うわけで、その内容に答えを出す必要はなく、単に話を聞いてあげるという場があるだけでも、だいぶ生活は変わっていくのだろうと思わされる一冊だった。
読了日:2023年9月16日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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