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小説『十字屋敷のピエロ』悲劇のピエロ



 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 読書のペースは2週間に1冊程度。


 今回は東野圭吾作品 小説『十字屋敷のピエロ』を紹介します!


[基本情報]

 著者:東野圭吾

 出版社:講談社文庫

 出版年:1992年

 ページ数:333ページ

[登場人物]

竹宮水穂

 本作品の主人公。十字屋敷の主人で故人の竹宮頼子の姪。

 客観的に物事を捉え、冷静に物事を分析する。

竹宮佳織

 水穂の従姉妹。母 頼子が水穂の母 琴絵の姉に当たる。足が悪く車椅子生活。

 謎多い女性。 

悟浄

 竹宮邸にあるピエロを探し歩いている。悲劇のピエロだと言って回収したがっている。

 実はこの人物こそ、この作品の主人公なのか、シリーズものなのかと思ってしまう存在感。

[内容]

 十字屋敷に竹宮家の親族が集まる。竹宮頼子の四十九日を親族で悼もうと晩餐会が開かれる。

 その夜、屋敷の現在の主人 宗彦が何者かに殺された。彼のそばにはもう一人、秘書の三田理恵子の死体があった。外部犯と思われたその事件。捜査が進むにつれ、内部犯の可能性が浮き上がってくるのだった。

[感想]

 十字屋敷という独特の建物で起きた殺人事件を描く作品。

・ピエロから見た世界

 この作品の特徴と言えば、”悲劇のピエロ”と呼ばれる人形が事故現場、事件現場にいること。

 そして面白いのが、ピエロからの視点が描かれる。最初の殺人が起こった時も、ピエロは暗闇の中で起きているその出来事を目撃している。

 その後も、警察の話を聞いていたり、家政婦 鈴枝と祖母 静香の会話を聞いていたりする。その一つ一つが、事件の真相に近づいていくヒントになっている。この描写の仕方が実に見事。

 さらにピエロが客観的に見ていた事実にも罠があったという流れがとにかく興味深い。


・探偵は三人?

 この作品、事件の真相を探ろうとする人物が三人いる。

 あからさまに親族全員を疑ってかかっている青江。大学生の彼は性格が不器用で、相手の感情を逆撫でするような話し方ばかりする。しかし、事件のことに関しては、論理的に分析していて、確実に真相に近づいていく。

 同じように事件について密かに調べているのは水穂。彼女は事件当日、夜なかなか寝付けなくて偶然、宗彦のパジャマのボタンを見つけてしまったことがきっかけで、事件が内部犯だと考えている。そのことを決して口外はせず、捜査にきている刑事から上手に情報を聞き出したり、それとなくみんなから話を聞いて内容を整理している。最後には真相に到達。

 そして人形師の悟浄。ピエロの行く先々で奇妙な事件を見てしまっていることから、自然と事件の裏側を考えることに慣れているというのが悟浄の言い分。明らかに犯人ではなさそうな彼が事件の分析に協力している。それが面白い。もしかして、ピエロの見ていた内容を聞くことができる力を持っているのか?という超常現象的な展開になるのかと思う瞬間もあったけれど、そんなことはなく、論理的に事件を構築していく。

 三人ともそれぞれに真相に近づいていくという流れは、珍しいタイプの展開と感じた。


・真犯人がわかった時

 この作品は、いろんなところにトリックというか、勘違いをさせる仕掛けが含まれている。その一つ一つが解き明かされて行った時、なるほど、そういうことだったのか、と納得感。殺人事件の謎解きに納得というのも変な話だけれど、種明かしまでに描写されていた事実が上手に繋がっていくのが、興味深かった。

 日常生活を送っている中で、事件の真相に繋がっていくという流れが良かった。刑事の捜査も真相に近づいていたものの、最後は探偵役らしき人物による謎解き。

 実に読み応えがあった。


・人物関係にも注目

 親族が集まっているということで、基本的にはみんな遠い血縁、という感じの集まり。そんな中で異質の存在の青江。彼が佳織に一生懸命恋人アピールしているけれど、佳織は見向きもしない。

 その佳織は、永島という腹違いの親戚に好意を寄せている。しかし永島はその気持ちに応えることができない。といった構図が描かれている。純粋な恋愛ものというわけではないものの、この辺りの人間描写も、事件の真相に関わっているから面白い。

 

 実に奥深い作品だった。

 読了日:2023年6月18日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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