こんにちは、Dancing Shigekoです!
一冊読み終わるというのは嬉しい。
今回は小説『六人の嘘つきな大学生』を紹介します!
[基本情報]
著者:浅倉秋成
出版社:角川書店
出版年:2021年
ページ数:299ページ
[登場人物]
波多野祥吾
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。参謀タイプ。
予想外の結末。
嶌伊織
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。波多野と比較的息が合う。
こちらも予想外。
袴田亮
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。盛り上げタイプ。
豹変ぶりが怖かった。
九賀蒼太
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。リーダータイプ。
人というのは心の内側まで分からないもの。
矢代つばさ
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。分析力高い。
潔いような印象。
森久保公康
スピラリンクスの最終選考に残った就活生。情報収集力が高い。
見るからに根暗な感じは不利だと感じる。
[内容]
今やネット界のトップ企業であるスピラリンクスの最終選考に残った六人の学生。最終選考はグループディスカション。そのディスカションの結果で入社が決まると言う。全員で力を合わせて最終選考の準備を進める。
ところご、全員入社も可能と言われていたが、直前で入社は一人のみと方針が変わる。そして最終選考の日を迎えるのだった…
[感想](※ネタバレあります。ご注意ください。)
就職活動に挑む六人の大学生を描く作品。
・最終選考の攻防がすごい
六人みんなで和気藹々と最終面接の準備をする姿から始まり、東日本大震災の影響で採用者は一人に変わったと案内を受けた後の様子。
そして最終選考に挑んでいく。作品自体は波多野の視点から描かれていき、最終選考も基本的には波多野の心のうちしか描かれない。
最終面接のお題は、この中で一番採用にふさわしいのは誰かを選ぶというもの。このお題もなかなかにすごい。人事が本来決めるべき人材を自分たちで選考しろというのだから、前代未聞。
波多野が提案した30分に一回みんなで票を入れていき、最終的にポイントの高かったものを推薦するという流れ。この提案はかなり納得度の高い設定。すごいと思った。
そんなすごい提案が出たのにディスカッションは謎の封筒の出現で中傷攻撃。この貶め合い、さらにはその後の対応の仕方などが非常にハラハラだった。最終選考の結果がどうなっていくのか、一気に読んでしまった。
・構成が面白い!
こう言った最終選考の様子を二つの時間軸で進んでいく。最終選考に向けての準備、そして最終面接を軸とした時間軸と、それから何年も経った後の時間軸。こちらはスピラリンクスに就職した人と、当時一緒に面接を受けた残りのメンバーとのインタビューという形で描かれる。
インタビューが載る順番は最終選考で都合の悪い事実を暴露された人物からという流れ。これで、自然と誰がその封筒を用意したのかが見えてくるのだけれど、残り二人になって、どちらになっても、それは違うのでは??って思わざるを得ない展開が待っているからすごい。
・登場人物が個性的
こう言った最終選考での攻防を通じて、各人の都合の悪い事実が一つずつ明かされていく。そこから見える人物像。さらにインタビューで語られる当時の思い。みんな仮面をかぶっていたという感じが非常によく出ている。
袴田の中傷から始まり、久我、矢代とどんどん暴露されていく。ところがその都合の悪い事実の裏に隠されていた物語が、もう一捻りあるという展開。最後まで読む頃には最終選考での貶め合いが、いかに一過性のもので、表面だけを見たものだったのか、と感じる内容だったからすごい。
・誰が仕掛けたのか?
結局、誰が仕掛けたのか。この中傷ネタを仕込んだ封筒を誰が用意したのか。それが意外な展開。とにかくこの辺りをめぐっての見せ方が本当にすごい。
この作品、先に述べたように二つの時間軸で語られていくのだけれど、実はそれは第一部。第二部では、スピラリンクスに就職した人視点の見せ方に切り替わる。そこから明かされていく新たな事実。
とにかくすごい見せ方だった。
・就職活動に思うこと
インタビューの中でみんなが口にしていたこと。就職活動なんて、みんな嘘をついているものだと。その嘘を何度も何度も繰り返しているうちに真実になっていくと。さらに人事側もほんの一部分だけを見て、最適な人物を選ぶんなんて無理なこと、と開き直っているのだから、複雑。
人生を左右する就職活動、自分の人生を切り開こうとするみんなの必死さ。これからも誰かが就職活動をしていると思うと、見え方が変わる作品。
青春のようでミステリー、どうなっているの?が最後まで続き、最後にスッキリとさせてくれる一冊だった。
読了日:2022年8月15日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
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