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小説『元彼の遺言状』真実を知るとき、危険が迫る

執筆者の写真: Dancing ShigekoDancing Shigeko


 こんにちは、Dancing Shigekoです!


 読書はいい!


 今回は、新川帆立作品 小説『元彼の遺言状』を紹介します!


[基本情報]

 著者:新川帆立

 出版社:宝島社

 出版年:2021年

 ページ数:349ページ


[登場人物]

剣持麗子

 山田川村・津々井法律事務所の弁護士。とにかくお金のためにひたすら働く。

 前半の鮮烈な拝金主義っぷりが印象的。徐々に変化していく心境には共感する部分あり。

森川栄治

 麗子が学生の頃に交際していた二つ上の先輩。麗子が現在交際していた彼氏のあまりの冴えなさに嫌になり、久しぶりに連絡を入れると、栄治が亡くなったことを知らされる。

 莫大な遺産をいろんな人に相続する気まぐれ屋さんで、お騒がせな存在。死してなお存在感があるあたりはお金持ちの坊ちゃんといった印象。


[内容]

 剣持麗子は賞与の査定に納得が行かず、弁護士事務所を辞めると言って飛び出していった。あまりにもその状況が腹立たしかったため、元彼の森川栄治に連絡を入れてみた。

 後日、森川からメールが届くが、それは森川栄治が亡くなったというものだった。ネットには森川栄治の遺言状が公開され、自分を殺した犯人に全財産を相続するという。

 その遺言状を見て、森川の友人だった篠田は自分が殺したと思うと言って剣持に相談してくる。そして遺産相続のための犯人選考会にパスできるように協力するように頼まれるのだった。 


[感想]

 剣持弁護士が奇妙な依頼に巻き込まれる作品。

・ガツガツしている剣持

 作品始まって、初っ端から印象的出来事が起きる。剣持が恋人と食事をしている。その最中、彼が婚約指輪を出す。

 それを見た剣持が、何この貧相な指輪?と突き返す。もっと100万はする指輪を持ってこいと言う反応を見せる。それがきっかけで彼を突き放し、ふと昔の彼氏に連絡を入れようと思い立つ。

 婚約指輪の金額について、そう捉える人がいるのだと言う衝撃と自分自身の時はどうだったか?と言う思い。

 さらに剣持は職場で賞与の査定が渡される。その金額に不服で辞めると言って事務所を飛び出していく。

 前半、こう言った金銭勘定が頻繁に行われる。ガツガツしている感じが描かれる。その金額と自分の収入を比較してしまう悲しい部分もある。弁護士というのは、全然給与体系が違うのだと、ど真ん中に残る始まり。


・不可解な遺書と奇妙な依頼

 賞与の内容に不服で連絡を取った元カレから忘れた時に連絡がやってくる。ところがその内容が、本人からではなく、周囲の人だと伝えられる。

 連絡を入れた森川栄治は亡くなったというのだ。この展開で一気に趣は殺人事件?に転じていく。

 ところがそうはいかない。遺言状で、遺産は自分を殺した犯人に全額遺すという。しかも自分と関わりのあった人々にもささやかながら遺産を分与したいとなっている。

 そこで、急遽、剣持も森川から遺産を分与される一人になる。一方で、森川を殺したのは自分だと言い出す周辺の者から仕事の依頼も受ける。

 いつの間にか、森川栄治の死をめぐる展開に大きく転換している。


・女の争い?

 その遺産分与で別荘に集まった女性陣。元カノリストに載っているうちの数人が集まる。

 森川は自分の彼氏だったとオーラを滲みだす者、もう終わったこととサバサバしている人、振り回されている剣持。など、それぞれ思惑が違う女性が集まって、遺産分与の説明を聞いている。

 この光景、非常に異様だと思う。全く関わりがなかった者同士が集まり、同じ人物と交際していたと言う理由で顔を合わせる。

 元カノ同士が顔を合わせると言う時点で非日常感が滲み出ている。

 面白いことを考える人がいる者である。


・別荘地を舞台に

 そんなやりとりを別荘地で行われる。担当する弁護士も地元の弁護士で事務所を近所に構えている。

 東京の風景とはこの異なる閑静な別荘地街で、こんな遺産分与の話が着々と進んでいくのだから、平和というか、のどかと言うか。

 さらにダム近辺での金庫探しなど、自然がいっぱいな感じ。

 軽井沢って出ていただろうか?


・迫る緊張

 森川栄治を殺した人。もともと病死と見られているところに殺人犯と名乗り出る人たち。インフルエンザをうつしたと。

 そんな茶番から徐々に話は、本当に森川を殺した人がいるとなっていく。その真相に近づきそうになった?ものが一人殺されて、状況が大きく変化していく。

 剣持が調べ上げていくと、犠牲者がまた出るかもしれないと緊張感が走る。連絡を取ろうとしてもなかなか繋がらない。

 さらに連絡が来たと思ったら、危ない状況にいる事が明らかに。犯人に殺されるかもしれないと言う緊迫した空気になっていく後半。

 そこまで緊張感を上げておいて、最後がややバタバタだった感が残るのは、物足りなかった部分かもしれない。


 とは言え、奇抜な遺言状がきっかけで始まった関わり合いの真相が徐々に明らかになっていく展開は楽しめる一冊だった。


 読了日:2022年8月12日


 皆様の感想も是非お聞かせください!


 それでは、また次回!



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