こんにちは、Dancing Shigekoです!
今回は新川帆立作品 小説『倒産続きの彼女』を紹介します!
[基本情報]
著者:新川帆立
出版社:宝島社
出版年:2021年
ページ数:321ページ
[登場人物]
美馬玉子
弁護士、本作品の主人公。コーポレートチームに所属する。祖母と二人暮らし。
剣持弁護士
玉子の先輩。古川弁護士が不在だったため、代わりに玉子に仕事の手伝いを依頼する。
津々井弁護士
玉子の上司。海外出張好き。
川村弁護士
津々井と共に弁護士事務所を創立。倒産チームのボス。気難しい印象を与える。
近藤まりあ
津々井が顧問弁護士をしているゴーラム商会の経理。彼女の勤めていた会社は全て倒産していると言う内通があり、剣持、玉子が調べ始める。
[内容]
美馬玉子は祖母シマばあちゃんと暮らしながら、仕事に励んでいた。
古川の代わりに剣持の仕事を手伝うことになる。その仕事は近藤まりあが勤めていた会社がすべて倒産していると言う事実確認。調査を進めていくうちに関係者が襲われるのだった…
[感想]
若手弁護士・美馬玉子が私生活でも苦労を抱えながら奇妙な内通を調べる作品。
・倒産の裏に隠された事実
近藤まりあが働いていた三社はすべて倒産している。正しくは一社は民事再生法を適用されている。そして現在勤めているゴーラム商会も倒産の危機。
いかにも怪しい。そんな女性の調査。話を聞きに行っても、これまで働いてきた会社は全部倒産していると、自ら口にする態度にどんな思いが潜んでいるのか。
その様子は彼女が直接倒産に絡んでいるわけではなさそうと感じさせる。真相を追いかけていく。この展開が実に読み応えがあった。どんな秘密が隠れているのか、その秘密を知りたくて、どんどん読み進めることができる内容。
・周りを極度に意識する美馬玉子
その主人公である美馬玉子。同期と合コンしている場面から始まる。相手の男を手玉にとるのが得意という感じで会話をしている。しかし玉子の目的は同期の美法にいい男性を、と考えている。
この玉子の心の声、常に周りの人を意識している。そして相手のことを何処か見下している。そんな根暗というか、腹黒というか、そんな感じ。
仕事でも一つ年上の剣持を極度に意識する。できる先輩の、失敗をたくさん見つけようとしている。
何処か心が荒んでいる感じがする主人公。
その玉子が近藤まりあの調査を進めていく過程で経験した出来事から、最後には少し違った価値観に変わっている。そこの心境の変化を追いかけていくのも、興味深かった。
・東京の一角で
この作品は東京の弁護士事務所、商社、さらに少し離れたところの木材工場。玉子の自宅はマンションの一部屋。近藤まりあの高級マンションと、東京のあちらこちらを行き来する感じ。実際のその様子が想像できそうな、何処か遠い感じがするような、そんな世界観の作品。
東京に住んでいる人はあのあたりだろうかな、と想像出来るのかもしれない。
・仕事以外でも変化
玉子は近藤まりあの調査以外に、プライベートでは合コンをきっかけに医者の男性と少しばかり会うようになる。
家には82歳になる祖母がいる。今度結婚することになったと言われて、戸惑っていると、その日の夜には、倒れている祖母を見つける。急いで病院に搬送して一命を取り留める、という激動の生活。
もうすぐ退院できるかもしれないと思っていたら、再度発作を起こしてしまう、などプライベートでは、この祖母の存在が大きく描かれる。しかも、そこに待っていた展開も玉子に変化をもたらす一因となっていて、仕事をしながら介護、見舞いという生活の大変さも滲み出ていた。
・何のために働くのか
そんな祖母との出来事、仕事の方では近藤まりあの周りにいる人物たち、さらには倒産に関与していた人たちと接していくうちに、玉子は自分の人生について見つめる時間を持つようになっていく。仕事をしながらも家に帰ると考えを巡らせている。
そして最後に出した答え。そのスッキリとした感じが良かった。
事件の背景に興味を持たせつつ、美馬玉子の成長を感じる作品だった。
読了日:2022年5月26日
皆様の感想もぜひお聞かせください!
それでは、また次回!
Comments