Dancing Shigeko
小説『マスカレード・ナイト』宿泊客が投げかける無理難題を楽しむ

こんにちは、Dancing Shigekoです!
今週金曜日公開に備えて、読んでみました。
今回は東野圭吾作品 小説『マスカレード・ナイト』を紹介します!
[基本情報]
著者: 東野圭吾
出版社: 集英社文庫
出版年: 2020年
ページ数: 539ページ
[登場人物]
新田浩介:
警視庁捜査一課の警察官。前回、ホテル・コルテシア東京に潜入捜査していた経験から今回も潜入捜査することになる。
山岸尚美:
ホテル・コルテシア東京のコンシェルジュ。フロントクラークだったが数年前に新設されたコンシェルジュで持ち前の応用力を活かして宿泊客の無理難題を対応している。
氏原祐作:
今回、フロントクラークとして潜入する新田の補佐役に任命される。山岸尚美と異なり、一切の接客業務をしないように新田に厳しく命じる。
日下部敏哉:
アメリカから一時帰国しているビジネスマンで年末をホテル・コルテシア東京で宿泊。山岸に次々と難題を持ちかけてくる。
能勢:
所轄から警視庁捜査一課に栄転した警官。矢口班に所属するが、前回の事件をきっかけに新田との情報交換を大切にする。
[内容]
匿名通報ダイヤルの連絡を受けて、調べに行った練馬のマンションでで女性の死体が見つかる。捜査本部には匿名の通報者から、さらに連絡が入る。その内容は殺人犯がホテル・コルテシア東京のカウントダウンパーティーに現れると言うものだった。この通報を受けて、警視庁は再び潜入捜査計画を打ち出し、新田浩介をフロントクラークとして送り込む。フロントからコンシェルジュになった山岸尚美と協力しながら犯人逮捕に動くのだった。
[感想]
年末のホテル・コルテシア東京を舞台に新田浩介と山岸尚美が、それぞれの立場で事件解決に挑む作品。
・宿泊客はいろんな仮面をかぶっている
最初に登場する宿泊客 秋山久美子、いきなりの曲者。部屋には肖像画や人物画を飾らないことを言う要求する。実際に部屋にはないのに、外のビルに貼られた広告にケチをつける。そんな言いがかりでもコンシェルジュになった山岸尚美は、できませんとは言わないスタンスで解決を試みる。リクエストそのものに応えられない時は、代替案を提示して納得してもらうをモットーにこの難題を解決する。
続いて上得意様のホワイト氏とのエピソード。和紙を使った服を提案すると言う。それに対して、尚美はスキーウェアを作ってみせる。こんな感じで次々とコンシェルジュにリクエストを持ってくる形が続く。その内容はどれも非現実的で、どこか実際にありそうという感じで面白い。こうして事件と直接関係のない部分でも楽しめるのがすごい。
・新田と山岸尚美の関係は以前とは違う
今回、新田の補佐係は山岸から、氏原という公家のようなお堅い人物が担当。そんなわけで、前作ほどホテル業務に関する指導は少ない。(前作も言うほどホテル業務についてのツッコミはなかったような気もするが、そんなイメージがある)
新田と山岸でホテル業務に関しては上下関係があった前作から、今回は対等な立場として、あるいは純粋に山岸が捜査協力のために情報を共有するスタンスが新鮮だった。
前作、食事をして終わったところから、少なからず恋愛関係も発展したのかと予想していただけに、何事もなかった感じで再会していた予想外。逆にここに余計な恋愛感情を持ち込まないあたりが、お互いプロなのだと感じさせた。このお互いの仕事に対する実力を認め合っている関係が良かった。
そして今回新たに登場した氏原。この人物が個性的。宿泊客には最高の笑顔で、新田には冷めた表情で、と言うギャップ。氏原とやりとりを見ていると、公家のような人だと思っていたら、登場する人物の中でもそのように話す人がいて、イメージ通りのコメントが出てきたのが印象的だった。その氏原もプロだと言う感じが伝わってくる。登場するホテル関係者はみんなプライドを持っているのが滲み出ていた。
・シティホテルのロビー、大宴会場、フレンチレストラン、各部屋でイベントは常に起きている
今回の舞台はホテル・コルテシア東京。フロントだったり、コーナー・スイートの部屋だったり、別館の会議室だったりとホテルの中が中心。マスカレードナイトが開催される会場の外にはマダム・マスカレードと呼ばれる像が置かれていると言うのが描写としては印象に残った。
また事件捜査で描写されていた被害者のマンション。近くに建物が少ないからカーテンを開けていたという被害者。東京に周りに建物が少ない場所があるのだろうか、と想像をめぐらせるのも楽しかった。
ホテルの細部の描写が多いわけではなかったのだけれど、不思議と高級ホテル、一流ホテルと感じながら読み進めることができたのは、前作『マスカレード・ホテル』の効果かもしれない。
ホテルという限定された空間で繰り広げられる人間ドラマ。最後まで事件全体を把握するのに緊張続きの展開で、一気に読み進めたくなる作品だった。
読了日:2021年9月12日
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それでは、また次回!