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小説『アイネクライネナハトムジーク』重なり合う人生が絶妙


 こんにちは、Dancing Shigekoです!

 今回は伊坂幸太郎作品 小説『アイネクライネナハトムジーク』を紹介します!


[基本情報]

 著者:伊坂幸太郎

 出版社:幻冬舎文庫

 出版年:平成29年

 ページ数:341ページ


[登場人物]

美奈子

 美容師。常連の板橋香澄に弟を紹介される。

ウィンストン小野

 日本人初のヘビー級チャンピオン。全国民にエネルギーを与える。


[内容]

 美奈子は19年前のことを思い出していた。常連客の板橋香澄から弟を紹介される。電話で話すようになった二人。やがて美奈子はその男性がウィンストン小野だと知るのだった。


[感想]

 美奈子とウィンストン小野を中心に物語が進んでいく作品。

・複数の登場人物が個々の物語を作り上げる

 六つの章に分かれて構成されている。最初の五つのエピソードに登場する人物が最後のエピソードで関係を持っていくと言う展開。

 個々のエピソードと登場人物も個性的。どこか身近な出来事のようですこしだけ非現実なところが面白い。次はどんな展開が待っているのかと、興味が続く。

 中でも免許更新の話は印象的。妻に出ていかれて悲観的になっている藤間が免許更新のことを思い出す。

 免許更新ギリギリの最終日曜日にいつも行く。ある時、赤ちゃんを連れた女性と出会った。その彼女と五年後の免許更新時にもまた会う。

 こう言うあったりドキドキするだろうなと言う設定がいい。そして現在、再び免許更新の時がやってきた。また彼女に会えるかと期待を胸に免許更新に行くと言う辺りには、そうしたくなるのも分かると思ってしまう。

 こう言った感じでどれもありそうでなさそうな、それでいてあったら楽しいだろうな、と思えるエピソードに満ちていた。


・三つの時間軸が交互に展開する

 最後のエピソードは19年前、9年前、そして現在と言う形で交互に描写されていく。それまでの五つのエピソードに登場した人物がいろんな形で繋がりを見せる。

 やや複雑で一度では把握しきれなかった部分もあるものの、それぞれの人物が交錯している構成が、次にはどうなったのか、と言う興味常に維持させた。


・東京と仙台を舞台に

 東京が舞台の時と、仙台が舞台で描かれている。仙台の駐輪場は、あの辺りだろうかと想像が膨らむ。

 仙台からボクシングの試合を見るために東京に出ていくエピソードは、こう言ったイベントには各地から集まってくるのだと認識する。

 考えてみると自分も東京まで出て行ったことがあったように思う。


・高校生のエピソードが印象的

 高校生と若い男女が交互に描かれる章がある。高校生の方は男子生徒がクラスのマドンナと駐輪場の見回りに行くと言うもの。

 若い男女の方はファミレスで客と揉めている女性スタッフを、男性客が助けるきっかけを作った場面から始まる。

 この全く色の違う世界が章の最後で合流する。見事な収束のさせ方で、これはすごい!と感じずにはいられなかった。


・美奈子とウィンストン小野

 全体を通じてウィンストン小野が日本人初のヘビー級チャンピオンになったことで、世間が騒いでると言う設定。

 その小野と美奈子の電話でのやり取り、その報告を友人にすると言う内容から、最後はボクシングのタイトルマッチの描写に変わっていく。

 恋愛小説のようで、青春小説になっていく感じの変化が面白い。そしてボクシングというテーマがfit boxingを連想させて、楽しい。


 伊坂幸太郎ワールドが存分に楽しめる作品だった。


 読了日:2022年5月30日


 皆様の感想もぜひお聞かせください!


 それでは、また次回!



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