Dancing Shigeko
小説『むかし僕が死んだ家』時が止まったその家に何が!?

こんにちは、Dancing Shigekoです!
東野圭吾作品が続く。
今回は東野圭吾作品 小説『むかし僕が死んだ家』を紹介します!
[基本情報]
著者:東野圭吾
出版社:講談社文庫
出版年:1997年
ページ数:313ページ
[登場人物]
男性
本作品の主人公。大学で勤めている。元恋人から連絡があり、一緒に長野に行くことになる。
多分、名前が出てこなかったと思うのだけれど。
倉橋沙也加
男性の元恋人。自分の父親がときどき行っていたと思われる場所に男性を誘って向かう。
真面目そうな感じの女性。しかし、実際にはいろんな悩みを抱えているのが見えてくるのが印象的。
[内容]
僕は倉橋沙也加に頼まれて彼女の亡くなった父がよく行っていたと思われる長野の別荘地を一緒に訪れた。木に囲まれたその土地には一軒の家があった。父が遺した鍵は玄関ではなく、裏庭にある地下室への扉で使えた。中へ入っていくと、時が止まったような気配を漂わせていた。
沙也加は自分は小学生よりも前の頃の記憶がないという。ここに来ればそれを思い出す何かがあるかもしれないと考えていた。完全に時が止まってしまったように見えるその家を調べて行くうちに徐々に、その家のことが分かっていくのだった。
[感想]
一人の女性の過去を解き明かすために訪れた家を捜索する作品。
<母親として失格と考えている沙也加>
・娘を虐待してしまう心
長野に出てきて、夜になり、沙也加が実家に電話をする。娘の様子を義母に尋ねていたと言う。その後、ポロッと、本当は預けたのではなく連れて行かれた、と言い出す。その理由は、気がつくと、娘の行動に対して手が出てしまうことがあるのだと言う。
娘を傷つけてしまった直後に、すぐに思い直して、娘の傷を治療すると言った矛盾する行動をとっているのだという。
・虐待の理由は過去に
その虐待の理由が、自分自身の過去にあるのではないか、と沙也加は言う。そしてなぜ元恋人の僕に声をかけたのかというと、その虐待に関する記事を書いていたのがきっかけ。彼の書いた記事を沙也加が読んで、自分の過去に問題があったのだと言い出す。
しかも小学生よりも前のことを覚えていないのだと言う。そういった背景を胸に、父親が通っていた場所にヒントがあるかもしれないからと長野に向かうと言う流れ。
<手がかりが少しずつ>
・日記が見つかる
ところが到着したところは誰のものか分からない家。玄関は固定されていて裏から地下室経由でしか中に入れないときている。その家の住民について周りで知っている人はなく、家の中のものだけで情報を仕入れないといけない。そんな状況。
そして調べていくと、そこに住んでいたらしい子供の日記が見つかる。父親から言われて書き始めた日記。その日記を読み進めていくうちに、その家の住民が御厨という苗字だったこと、子供の名前は佑介。どうやら小学校6年生の時に、日記が途切れて何かがあったらしいことが分かる。
この日記だけでは全体像は全くわからず、何人かの登場人物がいたらしいことで止まる。一体、何が起きたのだろうか、と興味は御厨家の過去へと向かっていく。
・手紙が見つかる
その謎を解くのに役立ちそうな手紙が見つかる。佑介の父親が誰かに送ったらしい手紙が見つかる。その内容を読み進めていくと、どうやら佑介以外にも子供がいたらしいことが見えてくる。こう言った情報を元に沙也加らが推理を進めていく。
まるでその時代を生きてきたような、錯覚に見舞われる。
しかし御厨家の過去が少しずつ見えてくるものの、肝心の沙也加の過去は、近所に住んでいたらしいくらいまでしか分からずにいる。
・最後の手紙が見つかる
そしてその全ての謎を紐解く手紙が最後の方で見つかるのだけれど、とにかくそこからの展開の方向転換ときたら、予想外なものだった。最初の頃に抱いていた感覚とは全く異なる結末だった。
実際に家の中で、調べごとをしているのは沙也加と彼だけなのに、いろんな人物とあったような感じになるのだから、すごい。
話の途中に登場した人物が小説『虚像の道化師』にも登場した人物と同じ名前の人がいて、そちらをもう一度読んでみたくなった。
<舞台は長野の別荘地帯>
・松原湖周辺の別荘
作品の舞台は東京の一角で始まり、沙也加の希望で長野県の別荘地に移る。林道の奥の方に行ったところにある一軒の家が主な舞台になっていく。その途中、松原湖畔のレストランやコンビニも登場するけれど、基本はこの家が中心。
最初の印象はとにかく薄気味悪い家。人が住んでいたらしい気配があるけれど、どこか不自然。まるで、そこに住んでいた人があるタイミングでどこかに消えてしまったような印象を与える。時計がどこも11:10を示していた李、子供部屋の机には勉強ノートが広げられたままになっている。
この描写を読み進めていくと、過去から家がタイムスリップしてきた?あるいは住民が消えた?と感じる。そんなSF的な物語なのだろうか、と思って読み進めていると、どうやらそうではない。
では何が起きたのか。その謎が徐々に明らかになっていく。そして最終的にその家の意味がわかったときには別の不気味さが残った。メインの舞台が別荘地にある一戸建てだけなのに、かなり多くの出来事があったように思えるのだから、すごい作品だった。
全く予想外の結末へと向かって行く展開にどんどん読み進めてしまう作品だった。
読了日:2023年3月25日
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それでは、また次回!